第3期習近平体制の内政動向⑥
昨年12月以来の中国公式メディアが発する「ゼロコロナ」政策転換を「礼賛」する論調に辟易していた小生は、1月12日付の「中国軍ネット」に掲載されたコラム「早急に短所・弱点を全て補填せよ」の内容を読んで驚いた。「連日、全国各地は各種防疫措置を積極的、かつ妥当に行い、疾病の感染増加・医療物資不足の局面に有効に対応して社会秩序の安定を確保している」と切り出したコラムは、「現在、我が国一部の省・市はピークアウトを迎え、生産・生活の回復も加速しているが、14億以上の人口を有する大国で老人・子供という感染しやすい集団の規模が大きく都市・農村や地域間の発展のインバランスのため、1人当たりの医療資源、医学レベルが先進国に比べてギャップがある」とし、「例えば農村地域は医療要員、救護サービス能力、防疫物資の備蓄などの面で都市に比べて劣っている」、「旧正月到来で広大な出稼ぎ労働者・農民に加え大学生・高校生・専門学校生が相次いで帰省したら農村地域の流動性は大きくなり、疾病伝染のリスクも高まる」と冷徹な現状認識を明示していたのである。そして、同コラムは「我々はボトムからの思考を強化し、十分な準備を行い、寸刻も疎かにせず関連活動をしっかりと行い、早急に短所や弱点を全て補填しなければ皆の生命安全と身体健康を最大限守れない」と切実に訴えており、トップダウンの政策発表・矢継ぎ早の対応措置に追い付かない
現場の混乱・苦悩を吐露する当局批判となっており、今後の論調の行方が注目される。
では、中国当局の対応はどうなのか。12月26日、中国共産党の習近平総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は、愛国衛生運動70周年という時機を利用した「大衆運動」発動で重要指示を出し、「組織的な優勢と大衆動員の優勢を充分に発揮して、社会における巨大な防衛ラインをしっかりと作り、人民大衆の生命安全と健康を確実に守らなければならない」と強調した(12月27日付拙稿参照)。そして年明けの1月12日、今度は別の「大衆運動」発動80周年が祝賀されたのである。それは、1943年の陝西省延安において展開された「双擁」運動、すなわち「擁軍愛属」・「擁政愛民」各活動のことであり、同運動80周年記念座談会が開催された。座談会には王コ寧政治局常務委員か出席し、軍人の何衛東中央軍事委員会副主席(政治局委員)も出席して演説した。何副主席は「双擁運動は、中国共産党の指導の下、広く軍人と民衆による偉大な創造であり、革命・建設・改革という異なった時期で代替不可能な、重要な役割を発揮した」とし、「広範な軍民の意志力を党旗の下に集結させ、軍政・軍民が同じ心をもって凝集し、団結力を高めるものである」と強調した。この「大衆運動」は中華人民共和国建国前の革命戦争時代、陝西・甘粛・寧夏の国境地域で開始され、軍に対し政府を支援して人民を大事にし、政府に対し軍を支援して軍属も優遇するものであった。これは依然として猖獗を極める「COVID-19」の感染状況に対し、中国の党・政府部門は防疫活動の一環として、人民大衆の関与とともに軍の投入・関与を予告したのではなかろうか。したがって、先に紹介したコラムの内容は、軍人、軍機関に対して準備・対応を訴えたものとも解釈できよう。
他方、1月7日から8日まで中央政法工作会議を開催した政法部門の活動も活発化している。全国高級法院長会議、全国検察長会議、全国公安庁・局長会議が相次いで開催され、司法・公安部門に対し政法工作会議の重点が周知徹底されたのである。さらに1月11日には、党機関紙「人民日報」紙上に、陳一新政法委員会秘書長兼国家安全部部長(陳文清政法委員会書記の後任、第6代目部長)の「社会管理(中国語:治理)システムを完成させよう」と題する署名論文が掲載された。陳秘書長は「政治安全・社会安定・人民安寧の確保こそ、中国の奮闘目標や夢を実現するために良好な社会環境を創造するものである」とし、「政治安全が民族復興の根本である。国外敵対勢力の浸透・破壊・転覆・分裂活動を有効に防止し、敵対勢力と関連組織の非合法活動は適宜発見して早急に処置しなければならない」と主張した。これで中央政法委員会は陳文清書記、王小洪副書記(公安部部長)に加えて陳一新秘書長と「三役」揃い踏みとなり、表層の積極的な「大衆運動」展開とともに、深層の社会治安対策も万全を期するものとなっており、今後の旧正月(1月21日)に至る動向が注目される。


この記事へのコメントはありません。