政局よりビジョン論争を 自助か共助かも争点 視標「自民党総裁選」 東京工業大教授 中島岳志
自民党総裁選は候補者の乱立により、争点が見えづらくなっている。実質的に、次の日本のかじ取り役を決定する選挙であるため、政局だけでなく、ビジョンを争ってほしい。1回目の投票は党員・党友票が大きなウエートを占める。世論調査の動向を見ていると、石破茂、小泉進次郎両氏の対決を軸に、総裁選は展開すると考えられる。
では、争点はどこにあるのか?
ポイントは「リスクの個人化」なのか「リスクの社会化」なのかにある。「リスクの個人化」とは自助を強調する自己責任型の政治姿勢で、「リスクの社会化」は共助・公助を重視する再分配強化型である。
近年の石破氏は、明らかに前者から後者にシフトしており、新自由主義の見直しに取り組んでいる。低所得者の所得アップに集中的に取り組むことこそが、日本経済全体の好循環を生み出す。そして、富裕層が潤えば低所得者層にも恩恵が広がるトリクルダウンを強調したアベノミクスに対し、ボトムアップの経済政策を提唱している。総裁選では、この姿勢が金融所得課税の強化という政策として表れている。
小泉氏は構造改革・規制緩和を強調する新自由主義路線で、自助を強調する自己責任型といえる。総裁選に際して打ち出した「聖域なき規制改革」では、「解雇規制の見直し」「ライドシェアの全面解禁」が打ち出され、競争原理を重視する姿勢が鮮明になっている。
外交・安全保障でも両者には大きな違いがある。石破氏は日米関係を重視しつつも、日米地位協定の見直しに積極的で、ネットワーク型の集団安全保障=北大西洋条約機構(NATO)アジア版を提唱している。総裁選では、米国に自衛隊の基地を置くべきだと提起し、返す刀で沖縄を中心とした米軍基地の問題に切り込もうとしている。
一方、小泉氏は米国留学時代に、日本外交に大きな影響力を持ってきた戦略国際問題研究所(CSIS)に在籍。米国の対日戦略を左右するジャパンハンドラーといわれる人たちと深いつながりを持ってきた。これまでの対米追随を基調とした外交姿勢を継承すると考えられる。
このような大きな政治の軸を巡って論点を提示し、他の候補者も絡む形で、議論が活発に行われることが望ましい。
(新聞用に12日配信)


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