台湾総統選で民進党が「辛勝」、立法院では勢力減退
投票率は2020年の前回選挙の74.9%よりは下がって71.86%になた。前回の選挙では民進党・蔡英文総統は記録的な得票を獲得して再選を果たした。そのときに票源となったと見られる若者や都市住民などの「浮動票」「中間派」「無党派」などのグループが今回は、投票に行かないか、柯文哲氏に流れるかしてしまい、押し留めることができなかった。柯氏は敗れたといえ、得票率は予想を超える26%に達した。第三勢力の地位を確立した形で、やはり最大の台風の目だった。ただ、それだけで頼氏の前途が暗いものだと断定するべきではない。頼氏は逆境に強い政治家だ。2022年末の地方選挙の大敗から民進党の立ち直りに発揮したリーダーシップは記憶に新しい。貧しい炭鉱夫の家庭に育って台湾のリーダーにのし上がった意思の力をもってすれば、失われた支持を取り戻すことも不可能ではないかもしれない。
しかし、大きな不安材料は、同日に行われた立法委員(国会議員)選挙の結果で大きな勢力減退が避けられないことだ。民進党は現有議席(62)を大幅に減らして51議席にとどまった。国民党は現有議席(38)を大きく増やして52議席に達した。ただどちらも定数113議席の過半数となる57議席には達しない。第三勢力の民衆党は現有議席の5を8に伸ばした。民進党は、蔡総統時代の「完全執政」、つまり総統と立法院の両方を握ることを断念することになった。今後は民衆党がキャスティングボートを握ることになるが、民進党と国民党、どちらと組むかは不透明だ。選挙前の協力関係からすれば国民党のほうがつながりを深めていた経緯があった。一方で、民進党が執政党になるので、立法院での協力を条件に、立法院の副院長(副議長)や内閣の部長(大臣)のポスト幾つかと引き換えにすることができる。そちらの方が現実的なメリットは大きい。民衆党は事実上、柯文哲氏の個人政党的色彩が強い政党であり、柯文哲氏はブレの大きい人物として知られる。読みにくい情勢となりそうだ。
中国の出方は今後の注目点であるが、「実務的な台湾独立主義者」と自認したこともある頼清徳氏の当選は嬉しいはずはない。副総統となる蕭美琴・前駐米代表は中国政府が「頑固な台湾独立分子」と公式認定すらしている。その顔ぶれで、民進党政権が続くことは当然不快に感じるだろう。今後、経済協力関係の打ち切り・優遇措置の取り消しなど「制裁」に出てくる可能性は高い。選挙前は今回の選挙は「戦争か平和かの選択だ」というメッセージを北京は盛んに発してきた。その意味では台湾人民は「戦争を選んだ」というふうに習近平氏が認定しても不思議ではない。しかし、だからといってECFAの打ち切りや一昨年8月のペロシ訪台以上の軍事演習などの措置にすぐ出るとは考えにくい。友好勢力の国民党や民衆党が総統では敗れたものの立法院では一定の伸長を実現したことは、中国にとっては歓迎すべき状況だからだ。激しく台湾への北風を強めてしまうと、民進党が弱体化から息を吹きかえすリスクもある。圧力と懐柔のバランスの取り方は中国にとっても悩ましい。米国との関係の安定化や国内経済の立て直しもまだ途上であることも考えると、台湾への対応を決めるのにしばらく時間をかける可能性もある。


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