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宣伝ポスターに「はて?」 ジェンダー観、刷新機会に 自民党総裁選  共同通信記者 前山千尋

自民党総裁選のポスターを発表する平井卓也広報本部長=8月21日、東京・永田町の党本部

 日本のジェンダー格差を問う時の決まり文句になりつつあるだろうか。日本初の女性弁護士の一人で、裁判官にもなった三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公の口癖を借りたい。はて?

 21日、自民党総裁選の宣伝ポスターと動画が公開された。ポスターには安倍晋三元首相ら歴代総裁26人が並び、「THE MATCH(マッチ)」とプロレス興行みたいなキャッチコピーが躍る。

 「おじさんの詰め合わせ」。ニュース番組で意見を求められた若い女性のコメンテーターがこう表現すると、交流サイト(SNS)で「男性差別」などと反発が起きた。

 おじさんという語は「昭和」と並び、刷新しない人を象徴する時に使われている点は否めず、中年以上の男性が「おじさん」とくくられることへの不快さも理解できる。

 しかしポスターに登場するのは党内の権力闘争に勝ち残ってきた正真正銘のおじさんたち。動画では、拳を振り上げ演説する歴代総裁と、そこに視線を向ける女性や子どもが描かれる。聴衆に男性らしき人もいるが後ろ姿。政治の意思決定は男性、それについていくのが女性とでも言いたげないびつさが透ける。こうした歴史の先に今があるのか、とふに落ちた。

記者会見で自民党総裁選への不出馬を表明する岸田首相=8月14日、首相官邸

 2007年に就職した女性の私が社会のジェンダー不平等を実感するようになったのは30代後半。同期の女性は少なくなかったが、多くの日本企業と同様に社内の意思決定をする人のほとんどが男性だと気付いてからだ。

 毎年公表される世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」を持ち出すまでもなく、政治の場はその筆頭である。

 制作を担当した平井卓也(ひらい・たくや)自民党広報本部長は記者会見で「歴代総裁の思いを受け継ぎ、日本の未来を切り開いていく覚悟を示した」と説明。「MATCH」には政策論争や、国民のニーズと政策を合致させるといった意味を込めたそうだ。

 街中の広告のジェンダー観をあぶり出した「ジェンダー目線の広告観察」=小林美香(こばやし・みか)著=によると、人は自分が消費者として対象設定されていないと思う商品やサービスの広告を意識の外に置き、「ノイズ(雑音)」として遠ざけるのだとか。

 ジェンダー不平等の是正を願う私にとって、政治の主役を年配男性とする今回のポスターと動画はノイズでしかない。自民党にとってはその方が好都合かもしれないが。

 折しも、ポスターが公表された同じ週の「虎に翼」のテーマは、夫婦の姓。再婚を決めた主人公は1955年、個々の姓で生きる事実婚を選ぶ。

 偶然にも自民党の結党もこの年。70年近くを経て、自民党がけん引してきたと自負する日本は世界で唯一、夫婦同姓を義務付けている。

 染みついたジェンダー観を無邪気に露呈させた自民党。せっかく歴代総裁を並べたのだ。過去に向き合い、刷新する機会にしてほしい。「はて?」と疑問を投じる人の声にも耳を傾けられるか。それが問われている。

(新聞用に8月29日配信)

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