第3期習近平体制の内政・外交動向④
8月25日に南アフリカ訪問を終えて帰国の途に就いた習近平国家主席の訪問先は首都北京ではなく、まして水害に見舞われた地方ではなかった。26日に訪れたのは新疆ウイグル自治区であり、2022年7月以来連年の訪問となった。随行者は外遊に同行した蔡奇党中央弁公庁主任、王毅外交部長に加え、石泰峰党中央統一戦線工作部長、李幹傑党中央組織部長、何衛東党中央軍事委員会副主席、何立峰副総理、陳文清党中央政法委員会主任、王小洪党中央政法委員会副主任(公安部長兼務)と党・政府・軍・治安のVIPが勢揃いしており、習主席の「西方」重視、特に新疆工作への傾注度が伺われた。習主席は、区都ウルムチで現地首長の報告を聴取して「新疆工作に関する党中央の要求は明確であり、カギは徹底的に理解して実行に移すことだ」と檄を飛ばした。そして「社会的安定を常に首位に置いて安定と発展を結合させ、安定で発展を確保し、発展で安定を促進せよ」とし、「中華民族共同体意識をしっかりと打ち立てよ」と強調したことから、新疆ウイグル自治区が依然として不安定であり、同地域の治安・経済対策が焦眉の課題であることが浮き彫りにされたと言える。
他方、8月31日、中国外交部は定例記者会見で10月、第3回「一帯一路」国際協力サミット(中国語:高峰論壇)を北京で開くことを明らかにした。「一帯一路」構想は習近平国家主席が2013年に打ち出したものであり、本年で提唱以来10年目の節目となる。また、過去同様のサミットは2017年5月、2019年4月と2回開催されていたが近年はコロナ禍で見送られて4年振りのものとなる。したがって習主席は、今回の新疆ウイグル自治区視察でも「新疆独特の優位・優勢を発揮して一帯一路の核心地域建設を加速して、新疆を西方開放への橋頭保にせよ」と強調しており、「ムチとアメ」硬軟両様の新疆工作の実態が垣間見えた。では、肝心の外交動向はいかなるものであろうか。
ロシアのウクライナ侵攻から1年半が経過した8月24日、BRICSは当初の新興諸国5か国(最初はブラジル、ロシア、インド、中国の4か国で発足し2010年南アフリカが加盟)に加え、新規メンバーとしてサウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、アルゼンチン、イラン、エチオピアの6か国の加盟を承認して2024年1月から11か国体制になることを表明した。これによって主要7か国(G7)へのけん制・対抗を念頭に、国際社会における影響力拡大や、途上国間協力の進展が噂されているが小生は「過大評価」と感じた。地域的にみれば今回、中東・アフリカ地域から5か国(サウジアラビア、エジプト、UAE、イラン、エチオピア)、南米地域からアルゼンチン1か国が加わり、中東・アフリカ地域は南アフリカを足して6か国、南米地域はブラジル、アルゼンチンの2か国となった。では、残りのBRICS3か国はどこか、それらはロシア、中国、インドである。ロシア周辺の旧ソ連諸国を含むユーラシア地域、中国、インドのあるアジア太平洋地域からの加盟国は今回なかったのである。かつて1960年代、「第三世界」(もう死語か)におけるAA(アジア・アフリカ)諸国の躍動・隆盛からすれば、BRICSはまだあまりにも「新参者」の集まりで機構上、規模も影響力も小さいのだ。そして、今後の中東アフリカ地域は別として、中国、インドというライバル関係にある「地域大国」の動静を目の当たりにしてASEAN10か国も豪州もNZも太平洋島嶼諸国も加盟しておらず、米国の「裏庭」にあたる中・南米地域は米国への配慮からたった2か国止まりである。だからこそ、習近平国家主席自らの中国周辺地域への「囲い込み」外交が必要なのであろうが、インドネシアにおけるASEAN諸国会議(9月5~8日)、インドにおける20か国集団(G20)首脳会議(同9~10日)には李強総理(習近平に次ぐ党内序列ナンバー2で側近)の「代理」出席が明らかとなり、習近平は欠席となったことから、外交分野でもちぐはぐな対応が露見している。このような情勢下、岸田総理は上記会議出席のための外遊に出発したが、安易に日中首脳会談など調整・設定すべきではない。一部の論者は「悪玉」で反日派の習近平国家主席に対し、新首相の李強は対日関係改善の「切り札」であり「善玉」であるなどという見当違いの考えを開陳しているが、李強総理は習主席の「代理人」スポークスマンにすぎず、会談や和解提案など中途半端な対応は後に禍根を残すと思われる。


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