NPTの逆効果問題-‘事情の根本的変化’による条約終了は可能
「核の三本柱」については、「世界のパワーバランス維持」を根拠としてあげていますが、真にパワーがバランスしていれば、戦争は起きない、あるいは、起こせないはずです(力の均衡による平和・・・)。しかしながら、非核保有国のウクライナと核保有国のロシアとの間には戦争が起こっているという現実に鑑みれば、核兵器保有国と核兵器非保有国との間の力のアンバランスが戦争をもたらしているとする見方も成り立ちます。プーチン大統領がパワーのバランスが維持されていると誇らしげに述べているなら、それは、核兵器国である軍事大国間にあってはかろうじて相互確証破壊の論理が働いており、第三次世界大戦、あるいは、核戦争には至っていないとする認識を語ったに過ぎないこととなりましょう。その一方で、核兵器保有国の軍事的優越性の濫用は、ロシアや中国に限ったことではなく、自由主義国間の軍事同盟にあっても、由々しき問題を引き起こしています。核保有国による非核保有国に対する‘核の傘’の提供の約束は(もちろん、同約束は口約束ですので、履行されるとは限らない・・・)、対等な同盟関係ではなく、非対称的な従属関係をもたらす要因ともなるからです。米軍と自衛隊との事実上の‘一体化’、すなわち、自衛隊の米軍現地部隊化が推進されている日米同盟もその例外ではありません。加えて、国際法を誠実に遵守しようとしないイスラエル、北朝鮮、イランといった‘無法国家’による秘密裏の核兵器の開発・保有は、NPTが想定していない現実なのです。
かくしてNPTがその前文に掲げる‘全人類に惨事をもたらす核戦争の回避’という目的は、核戦争の脅威が迫る今日、虚しく耳に響くのみです。そして、核兵器国と非核兵器国との間のアンバランスが戦争誘発要因となっている現状からしますと、NPTは逆効果であり、核戦争の回避どころか、核兵器国による横暴を許す要因と言わざるを得ないのです。NPTが目的とは逆方向に機能している現実を直視すれば、同条約は、速やかに終了すべきとなりましょう。この点、核兵器国による核軍拡を条約違反として訴えるという方法もありますが、たとえ国際司法裁判所等から違反行為とする判決が下されたとしても、その判決を核兵器保有国が受け入れるとは限りません(南シナ海問題に際しては、中国が常設仲裁裁判所の判決を無視・・・)。また、NPTに法的拘束されることにより、非核兵器国が核の抑止力を備えることができない現状にも変わりはないのです(パワーのアンバランス状態が継続・・・)。となりますと、違法行為を法廷で争うよりも、条約そのものを終了された方が全世界の諸国の間でパワーバランスが成立することとなりましょう。
この点、条約法条約の第62条には、‘事情の根本的な変化’を事由とする条約の終了に関する条文があります。条約終了の根拠とし得る条件の一つとして、同条1項(a)は「当該事情の存在が条約に拘束されることについての当事国の同意の不可欠の基礎を成していること」と記しています。同条文に照らしますと、条約上の合法的保有国による核の恫喝、攻撃兵器としての世界戦略への組み込み、核軍備増強といった言動のみならず、イスラエル、北朝鮮、イランといった諸国の核保有行動も同条件を満たす事情の根本的変化となり得ます(インドとパキスタン両国の核保有は、むしろ、戦争の相互抑止の事例かもしれない・・・)。仮に、今日のように核保有国が非核保有国を攻撃する可能性が明白かつ現実的なリスクとなっていれば、NPT成立当時にあって、同条約の締約国となる国は存在していなかったことでしょう。国民のために現実に直面している問題に対処することは、政治家の重要な役割ですので、日本国を含めて世界各国の政治家がNPTに本質的に内在する逆効果、あるいは、逆機能の問題にお茶を濁し、見て見ぬ振りをしている姿は、国民に対する自らの義務や責任を放棄しているようにも見えます。偽善者に徹している政治家達は、世界史を裏から操り、今や第三次世界大戦へと人類を柔道しようとしている世界権力に忖度している、あるいは、その忠実なる僕なのでしょうか。


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