路線対立なら党内に亀裂 衆院選へ基盤固め目指せ 視標「立憲民主党代表選」 大阪経済大准教授 秦正樹
立憲民主党の代表選は、泉健太代表と枝野幸男前代表、野田佳彦元首相、当選1回の吉田晴美衆院議員による争いとなった。4人による論戦を展開することで、来たるべき衆院解散・総選挙を見据え、自民党総裁選に対抗する意図があるのは明白だ。しかし旧民主党時代がそうだったように、イデオロギーや路線対立が鮮明になると党内に亀裂が生じかねない。
野田氏が主張するように、政権奪取のために「中道保守層」の支持を取りにいくのは、戦略的には正しい。しかし、この層は自民党や日本維新の会の支持層でもあり、相当な覚悟を示さなければ取ることはできない「レッドオーシャン」(競争の激しい市場)だ。
相当な覚悟とは、現実的な安全保障政策を示すだけでなく、憲法9条改正にまで踏み込むということだ。そこまでしなければ保守とは見なされないし、支持は得られない。だが、9条改憲をアピールすると、党の路線対立を先鋭化させるだけでなく、立憲民主党のコアな支持層であり、枝野氏が立脚する「中道左派層」が離れかねない。
そもそも、(衆院副議長を含めた)現有98議席の立憲民主党が次期衆院選で一足飛びに政権交代を果たすのは難しい。しかも日本維新の会は連立に消極的だし、共産党とでは議会勢力と支持層に広がりがない。
そうであれば、中期的な時間軸や視点を持って、党の基盤や実現しうる政権の枠組みをしっかりと固める中で目指すべきなのではないか。
こう考えると今回の代表選では、次期衆院選以降の政権交代をにらみ、路線対立を招くことなく、一つでも多くの議席を得られる現実路線の候補が選ばれるべきだ。
仮に自民党が若返りを果たした場合、かつての民主党政権の中枢にいた人が代表になれば、次の選挙でどういう結果を招くかは想像できる。そこは、有権者はしっかりと見ているのではないか。
自民党派閥の裏金問題では、これまで立憲民主党として強く批判し、抜本的改革を唱えてきたので、候補者4人に大きな差異はない。自民党総裁選の有力候補である、例えば小泉進次郎元環境相をベンチマーク(基準)にして、その主張よりも強い姿勢を示し、立憲民主党こそが改革政党だと有権者に受け止めてもらえるかが問われるだろう。
いずれにしても、有権者は今回の代表選を、自民党総裁選とともに大いに注視するべきだ。恐らくこのまま衆院選に入っていくので、両党ともそれぞれの候補が有権者の支持を広げようと、自らが掲げる政策をしっかりと説明し、討論会で論戦を交わそうとする。
しかも、普段は見えない政策の立案や決定のプロセスがこれまでになく可視化されるので、有権者にとってこの上ない機会になる。
クリーンさを訴える立憲民主党と、自浄作用をアピールする自民党のどちらが有権者の期待をより得られるかという観点からも、意味のある代表選と総裁選になるのではないか。(談)
(新聞用に9月9日配信)


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