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熟考型リーダーを望む  景気好循環の構造学べ 視標「岸田首相が不出馬表明」 第一生命経済研究所首席エコノミスト 熊野英生

 岸田文雄首相の後任は誰であっても難しい政策運営を迫られそうだ。11月には米大統領選があり、新大統領と向き合わねばならず、国内では衆院解散・総選挙をにらんで、防衛費などの歳出拡大圧力が強まるのは必至だ。内政、外政ともに気の抜けない状況が続く。

 記者会見で自民党総裁選への不出馬を表明する岸田首相=8月14日午前、首相官邸

 

 国内の課題は何と言っても賃上げの継続だ。物価高対応は今後の賃上げの動向にかかっている。円安の一服で物価上昇率は鈍るので、これを上回る賃上げ(実質賃金のプラス転換)の定着を目指すことが肝要だ。

 6月の現金給与総額は前年比で4・5%増と、物価上昇率(2・6%)を上回った。ボーナスが伸びた一時的要因が効いており、実質賃金の持続的な増加には、来年の春闘でも大幅な賃上げを実現する必要があろう。

 賃上げには労働生産性の向上が不可欠だ。岸田氏にはその発想が薄かった。企業体質改善を通じた競争力強化が生産性を上げる。大企業は人工知能(AI)を使って、事務作業などで大きな省人化効果を生み出している。そのノウハウを中小企業も学び導入できれば、人手不足と生産性を一挙に改善できる。

 残念ながら、政治の世界はテクノロジーに疎い。次の首相はテクノロジーにも目を配って、政策の旗を振ってほしい。

 2024年春闘の集中回答日を迎え、労使交渉の回答状況が書き込まれた金属労協事務所のホワイトボード。トヨタ自動車など大手が相次いで満額回答した=3月13日、東京都中央区

 

 岸田氏は財政に依存した経済政策が目立った。景気を良くするためだと言って、大型の補正予算を編成し、物価対策と言っては補助金を支給したり、減税を実施したりした。少子化対策も給付金や手当を配って、支援と称していた。

 だが、国民が物価高に負けない賃上げ実現に確信が持てない中、受け取ったお金を景気の柱である消費に回すとは限らず、財政投入型の対応には限界が見えていた。

 賃上げを起点に景気を拡大するメカニズムを構築しなければ、財政をつぎ込んでも無駄になってしまう。社会各層にいる利害関係者の声に耳を傾けるだけで、問題が解決するほど甘くはない。次の首相は、景気の好循環につながるロジックをよく理解し、経済の構造変革に取り組むべきだ。私は、そうした熟考型リーダーの登場を望む。

(新聞用に8月14日配信)

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