自民党内の包囲網に屈す 問われる改革への本気度 視標「岸田首相が不出馬表明」② 政治アナリスト 伊藤惇夫
自民党総裁選に岸田文雄首相が出馬しないことになった。岸田首相のままでは、来たるべき衆院選に勝てないという党内の「包囲網」に屈し、最終的に不出馬を表明せざるを得なくなったのだろう。大統領選に勝てないからと立候補断念に追い込まれたバイデン米大統領と同じ構図だ。
首相は記者会見で、自民党派閥裏金問題の責任を取って不出馬を決めたと説明したが、これはおかしい。ならば、なぜもっと早く責任を取ろうとしなかったのか。
この間、政治資金規正法の抜本改革をせず、裏金議員の処分も不十分だったのは、総裁選での再選を意識して、党内の実力者に配慮したからだろう。7月の東京都議会の9補欠選挙で惨敗し、その後も再選への道を模索したが、万事休すとなったということではないか。
岸田政権は、政策面で大きな失点はなかった。だが、裏金問題と、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題への対応に対する国民の不満が高まり、そう悪くはなかった首相のイメージが完全に崩壊してしまった。
こうなると元に戻すのは難しい。首相は「聞く力」を掲げただけに、それが「国民の声を聴こうとしない」イメージに転じ、どんな政策を打ち出しても国民から評価されなくなってしまった。
今後、総裁選に向けた動きが次々と出てくるだろう。しかし、裏金問題で言うなら、自民党議員は全員が国民の不信感を払拭できない現状への責任を取るべきではないか。改革への声を上げることなく、党の方針や処分内容を黙って受け入れていただけだった。
それは、出馬が取り沙汰される石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相、小林鷹之前経済安全保障担当相らも同じだ。
だから、総裁選で単に表紙を替えるだけなら何の意味もない。問われるのは、政治改革にどこまで本気で取り組むかだ。ゼロからのスタートができるのか、候補者討論会で問い続けるべきだ。
総裁選の在り方も問題になる。派閥の縛りがなくなった以上は、党員の人気が高い人が比較的有利なように思える。しかし、こうした声を重視することなく、党内力学だけでやれば、自民党そのものが国政選挙で問われることになる。(談)
(新聞用に8月14日配信)


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